「テクニックといったって、トラの巻きのようなものはないんだよ」
ジャックはそう言いながら、悠然たる態度で受話器をつまみ上げました。
ダイヤルを回します。
相手は、シリコンバレーの大手半導体メーカーの某副社長。
「ジャックです。実は、今度、新しく設立される会社の社長を捜しています。ご相談に乗ってもらえますか・・・」
あとでわかったことですが、ジャックは、先方の自宅ではなく、いきなり会社に電話を入れているのです。
「こんな話は、できるだけオープンでストレートな方がいい」のだそう。
たえず周りを気にする日本とは大分、わけが違います。
翌日、記者はジャックに同行して、シリコンバレー中央部の都市サニーベイルに向かいました。
めざすは、くだんの「某副社長」が待ち受けるヒルトンホテルのレストラン。
テーブルには、もう1人の男がすわっていました。
以前、ジャックらとコンピューター・メーカー「シグネティク」社の経営に携っていた男性でした。
このメーカーはすでに投資家に売り渡し、これから新しい別会社を作る準備にはいろうとしているのであるのです。
「うまく行った。彼(某副社長)は、われわれの構想にえらく乗り気だよ」
ロビーで待つこと約90分、レストランから出てきたジャックは、第1回の面談の様子を自慢げに説明してくれます。
しかし、肝心の、これから作ろうとする会社の営業内容については、さすがに口が固い様子。
「パソコンの新技術だ」としか言わなかったそうです。